核兵器保有について、日本国内では長年タブー視されてきました。
しかし近年、国際情勢の変化に伴い「核兵器保有 賛成」という立場からの議論も注目を集めています。
被爆国である日本が核を持つべきかという問いは、極めて複雑で多面的な問題です。
この記事では、核兵器保有賛成論の根拠やメリット、そしてリスクについて詳しく解説していきます。
核兵器保有賛成論の6つの根拠とは?

核兵器保有賛成論には、主に6つの論点が存在します。
それぞれの根拠を詳しく見ていきましょう。
1つ目は核抑止力の確保です。
核兵器を保有することで、敵対国からの核攻撃を抑止できるという考え方です。
相手国が核攻撃を行った場合に報復できる能力を持つことで、攻撃を思いとどまらせる効果があります。
実際にインドとパキスタンは双方が核を保有した後、和平のテーブルについたという指摘もあります。
2つ目は勢力均衡による安定です。
周辺国との勢力バランスを取ることで、地域の安定を図ることができるという考え方です。
フランスの人類学者エマニュエル・トッドは「中東が不安定なのはイスラエルだけに核があるからで、東アジアも中国だけでは安定しない」と述べています。
複数国が核を保有することで、相互抑止が働くという理論的根拠があります。
3つ目は同盟依存からの脱却です。
米国の「核の傘」への依存から脱却し、自主的な外交・安全保障政策を展開できるようになるという考え方です。
米国の影響力低下の可能性や、トランプ政権などによる同盟国への防衛負担増の要求が背景にあります。
核を持てば軍事同盟から解放され、戦争に巻き込まれる恐れがなくなるという主張もあります。
4つ目は国際的影響力の向上です。
唯一の被爆国である日本が核を保有することで、国際社会での発言力が増すという考え方です。
核兵器保有国は国際政治において特別な地位を持ち、核軍縮や核廃絶に関する議論において実効性のある発言ができるようになります。
5つ目は中国脅威への対応です。
中国の軍事力増強と経済発展に対抗するための手段として核武装が必要という考え方です。
中国の軍事支出は19年連続2桁増となっており、2007年時点で公表5兆円超、実態は3倍との指摘もあります。
中国が超大国となった場合、アメリカが台湾や日本を守るために中国と戦争できるか疑問という懸念があります。
6つ目は核廃絶への現実的疑念です。
核保有国が核を完全に廃棄する可能性は低いという現実認識から、日本も保有すべきという考え方です。
アメリカ、中国、ロシアは核廃絶しないことを表明しており、核保有国が核を放棄するはずがないという現実から目をそむけたくはないという意見があります。
日本が核を持つメリットと国際的な支持

日本が核を持つメリットとして、賛成論者は複数の点を挙げています。
最大のメリットは自主防衛能力の確立です。
米国の「核の傘」に依存せず、独自の抑止力を持つことで、外交的自立性が高まります。
これにより、アメリカの戦争に巻き込まれるリスクを減らし、日本独自の外交政策を展開できるようになります。
また、地域の勢力均衡を保つメリットもあります。
中国や北朝鮮の核の脅威に対して、日本が核を保有することで東アジアの軍事バランスが安定するという見方があります。
不均衡な関係は危険をもたらすため、複数国が核を保有することで相互抑止が働くという理論です。
国際的にも、日本の核保有を支持する声があります。
最近では、アメリカの安全保障戦略専門家の間で「日本は核兵器を保有すべきだ」という議論が広がっています。
ハーバード大学のスティーヴン・ウォルトやシカゴ大学のジョン・ミアシャイマーなどは、アメリカが東アジアでの覇権を放棄する「オフ・ショアー・バランサー戦略」を主張しています。
アメリカの防衛負担軽減や地域の勢力均衡維持、日本の自立的防衛能力の向上が理由として挙げられています。
憲法上の解釈についても、過去の政府答弁では一定の見解が示されています。
1973年に田中角栄首相は「自衛の正当な目的を達成する限度内の核兵器であれば、これを保有することが憲法に反するものではない」と述べています。
2002年には安倍晋三官房副長官も「自衛のための必要最小限度を超えない限り、核兵器であると、通常兵器であるとを問わず、これを保有することは、憲法の禁ずるところではない」と発言しています。
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核兵器保有に伴うリスクと課題

核兵器保有賛成論にも、重大なリスクと課題が存在します。
最も大きな課題は国内の強い反核感情です。
被爆国としての反核感情や政治的混乱のリスクがあり、広島・長崎の犠牲者や被爆者に対する道義的責任も問われます。
2023年NHK世論調査では、核保有に反対する意見が約70%を占めています。
国際的な信頼低下も深刻なリスクです。
核不拡散・廃絶への逆行として国際社会から敵視される恐れがあります。
NPT体制からの脱退が必要となり、核拡散防止条約の崩壊につながる可能性もあります。
日本が核を持つことで、周辺国の核武装を誘発し、地域の軍拡競争を引き起こすリスクも指摘されています。
経済的・技術的負担も無視できません。
核兵器の開発、配備、保管、管理、破棄には莫大な費用がかかります。
これにより他の防衛予算が圧迫され、財政的負担が増大する可能性があります。
2025年12月、河野太郎氏は「『日本は核兵器を保有すべき』という議論があること自体を問題にするのはおかしくて、核兵器を保有した場合のメリットデメリットを議論して、特定の意見を議論からも排除すべきではない」と発言しています。
タブーなき議論を進めること自体に価値があり、国民的議論を通じて安全保障の課題を透明化できるという意見もあります。
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まとめ
核兵器保有賛成論には、核抑止力の確保、勢力均衡による安定、同盟依存からの脱却、国際的影響力の向上、中国脅威への対応、核廃絶の非現実性への対応という6つの主要な根拠があります。
日本が核を持つメリットとしては、自主防衛能力の確立や地域の勢力均衡の維持が挙げられ、アメリカの一部専門家からも支持する声があります。
一方で、国内の強い反核感情、国際的信頼の低下、経済的・技術的負担、地域の軍拡競争リスク、NPT体制への影響といった重大な課題も存在します。
現時点では、核武装や核共有の即時導入よりも、「タブーなき国民的議論」を進めることが重要とされています。
被爆国の歴史や国際協調を考慮しながら、透明で建設的な議論を通じて、日本の安全と平和を両立させる道を探ることが求められています。

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